銅と周期表

公開日 2022年10月25日

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 金属を辞書で引くと「金属光沢をもち、熱や電気をよく伝え、延性や展性に富む物質の総称(大辞林第三版)」とあるね。今日は電気を伝えることを考えてみよう。
 電気を一番よく伝える金属は銀(Ag)、その次は銅(Cu)、金(Au)と続く。熱をよく伝える順番もこの順番だよ。近くに周期表があったら見てほしい。(インターネットで「周期表」で検索してみると、面白い周期表があるので探してみよう)Cu、Ag、Auは周期表の中で縦に並んでいるね。この例のように、縦に似たような性質の原子が並ぶのは、量子力学で明らかにされ、電子の配置の仕方によっていることがわかってきた。これらの金属が電気をよく伝えるのは電子のせいだよ。金属には自由電子とよばれる原子に束縛されていない自由に動き回っている電子がある。このような電子があることが金属結合といわれる。銀、銅、金はこのような電子があることによって電気をよく通す。これらの金属が熱をよく伝えるのも、これら電子の影響だよ。金属の場合、電気も熱も大部分が、自由電子が伝えるので熱伝導(L)と電気伝導(σ)の間にはウィデマン-フランツの法則(Wiedeman-Franz law)とよばれる経験則がある。電線に銅が使われるのは銀では高いからだろうね。
 銅は電気を伝えるだけでなく、錫との合金は青銅(ブロンズ)と呼ばれ、青銅器時代に活躍した金属だね。日本の東大寺の大仏注1や鎌倉の大仏注2は銅と錫の合金でできているようだけど、成分はだいぶ違うようだね。
 さて、周期表についても一言。周期表はメンデレーエフが19世紀の終わりに提案したもので、前にも書いたけど、この順番に並ぶ理由は量子力学が発展してわかってきたことだよ。インターネット上には面白い周期表もあるから、それらを見ていろいろと想像を膨らますのもいいかもしれないね。ちなみに113番目の元素はニホニウム(Nh)といって2016年に正式に認定された日本の研究グループが見つけた元素だよ。皆さんも「今はわからないけど将来説明できる」ことを発見できるかもしれないよ。
 

 

 

参考資料/URLについて
注1) 高野、石野、生産技術振興協会「生産と技術」1968 、7-14、大仏の話
注2) 鎌倉大仏殿 高徳院『高徳院国宝銅造阿弥陀如来坐像 平成 27 年度保存修理報告書』、株式会社 便利堂、平成 30 年(2018)3 月31日発行
 

 

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