「金属」って面白い
島根は金属材料ゆかりの地!
島根の地は古代から日本の金属材料の先端を走ってきたと言えます。
銅(Cu, Copper)については、荒神谷遺跡(出雲市斐川町)、加茂岩倉遺跡(雲南市加茂町)から弥生時代のものと推定される大量の銅剣、銅鐸が出土されています。これらは、その数の多さとともに技術的なすばらしさで現代の人々を驚かせました。
銀(Ag, Silver)については、石見銀山において16〜17世紀の約100年間に、大量の銀が採掘されていました。石見の良質な銀は、海外にも数多く輸出され、世界経済に影響を与えたと伝えられます。石見銀山遺跡(大田市)は2007年7月に産業遺産としてはアジアで初めてユネスコの世界遺産に登録されました。
そして鉄鋼材料(Fe, Iron and steel)です。鉄鋼材料は、過去から現代に至るまで、人類にとって最も重要な材料であり、鉄鋼生産量は現在でも国力を表す重要な指標です。この鉄鋼材料を作る技術が島根には古くからありました。砂鉄と木炭から鋼を作る「たたら製鉄」です。「たたら製鉄」は島根で発展した日本独自の製鉄法であり、1000年以上の歴史を持ちます。日本刀の原料・玉鋼(たまはがね)を製造できる唯一の製鉄法です。
このような伝統の上に立ち、現在でも島根県では安来地区の企業群を中心に鉄鋼材料の生産が盛んであり、世界に誇れる材料開発力・製品開発力を誇っています。島根大学でも、金属材料の研究分野で、特に金属材料の原子レベルの解析で、多くの顕著な業績を挙げてきました。島根の地は、金属材料分野において“聖地”と呼ぶにふさわしい環境と言えるでしょう。
研究対象としての“金属材料”
人類は古くから金属を“材料”として利用してきました。そして、現在も私たちの生活は金属材料なしには考えられません。
一言で“金属”といっても、金属元素の種類は多く、性質も多様です。さらに実用上は、単体金属を用いることはほとんどなく、いくつかの元素を組み合わせて使用されます(合金)。さらに、合金は、圧延・鍛造などの加工や熱処理などを経て、材料内部の構造(金属組織)を変化させます。このように、材料選択においては、元素の組み合わせ、添加物の種類など、材料製造プロセスにおいては、加工法や熱処理などを目標とする物性を実現するために検討する必要があります。これら材料と製法の組み合わせは、もはや無限とも取れます。このことは、金属材料は人類にとっては古い材料ですが、その可能性は、まだ無限に広がっていることを意味します。
現代では様々な技術が日々進歩を続けています。しかしながら、どのような技術でも「材料」を使わない分野はありません。新しい材料の開発は、新しい技術の進歩に貢献できます。「金属材料」は夢のある研究対象であり、さまざまな金属材料開発において、研究者の挑戦はこれからもずっと続きます。
NEXTAでは
NEXTAでは産業界と大学が密に連携を取りながら先端金属材料の研究を推進します。研究に当たっては、材料科学に重要な4本の柱 ①金属材料の微視的構造を視る ②金属材料の強さを測る ③金属材料を設計する ④金属材料を創る を立て、これらを相互に関連させながら研究を推進します。
研究に当たっては、国内外の大学、研究機関、さらには民間企業の研究者との共同研究を行うことができます。さらに、松江工業高等専門学校、県内企業、国内外の大学と連携して実践的な教育システムを構築し、金属分野の高度な専門人材の育成を目指します。