公開日 2024年02月27日
近年、様々な金属部品の製造法としてその形状造形自由度の高さから積層造形(Additive Manufacturing; AM)が注目されており、特にジェットエンジンなどの極限状況で使用される超耐熱合金部品の造形方法として期待が大きくなっています。AMにはいくつかの手法がありますが、本研究では「指向性エネルギー堆積法(Directed Energy Deposition; DED)」と呼ばれるレーザー照射部に金属粉末を噴き付けて溶融・凝固させる手法を対象としています。
DEDにおける問題の一つに、レーザーで溶融した溶融池(メルトプール)に空孔(気泡)が入り込み、そのまま凝固するとそれが部材の割れなどの原因となることが挙げられます。そのため、空孔の起源、メルトプールでの挙動、特に滞留と放出のメカニズムを明らかにすることが必要です。
英国University College Londonが主体となり実際の造形を行いながら欧州シンクロトロン放射光施設(ESRF)のX線シンクロトロン施設でメルトプールのその場観察を行いました。
その結果、空孔のうち主たる割合は気流微粒化された粉末由来であること、また一部は以前の層における残存が由来であることが分かりました。また、小さい空孔が一定の時間でメルトプールから抜けていく一方で、合体して大きくなった空孔が予想に反して長く滞留することも明らかになりました。
島根大学次世代たたら協創センター(NEXTA)の新城淳史教授は、独自に開発した熱流体シミュレーションプログラムにより、この実験の挙動をそのまま再現しその機構をメルトプールのマランゴニ流れの挙動によって説明することに成功しました。
これらの知見は、AMによる部品製造においてその品質を高めることに役立ちます。航空宇宙をはじめとする様々な分野での活用が期待されるAMにおいて、NEXTAはその最先端のシミュレーション技術を活用して重要な知見を得ることに貢献しました。また、本成果は、2024年2月24日付でNature Communications誌にオンライン掲載されました。
本研究成果についてプレスリリースを行いました。
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プレスリリース資料(研究成果)[PDF:974KB]
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